AKIRA-8
AKIRAシリーズ 8 / 14釜戸の中は、まるで地獄の入り口のように真っ赤だった。 煮えたぎる炎が、底から上へと揺れ、そこにあるものすべてを赤く染めていた。 「この中に何を入れても、全部真っ赤になるのかな…?」 Akiraの頭にふと浮かんだその疑問が、次の遊びのきっかけになった。 火に勝てるもの――それは水だ。 「火の天敵っていえば、水だよな」 彼はコップに水をなみな
釜戸の中は、まるで地獄の入り口のように真っ赤だった。
煮えたぎる炎が、底から上へと揺れ、そこにあるものすべてを赤く染めていた。
「この中に何を入れても、全部真っ赤になるのかな…?」
Akiraの頭にふと浮かんだその疑問が、次の遊びのきっかけになった。
火に勝てるもの――それは水だ。
「火の天敵っていえば、水だよな」
彼はコップに水をなみなみと注ぎ、勢いよく釜戸の口へ向かって投げ込んだ。
ジュワァーーッ!!
大きな音とともに、さっきまで燃え盛っていた赤が一瞬で黒に変わる。
灰が舞い上がり、釜戸の口からふわりと吹き出す様子は、まるで煙幕のようだった。
けれど――何かが足りない。
もっと長く、もっとおもしろく、火と遊べる方法はないだろうか?
Akiraはまた考えを巡らせた。
水を沸かすだけじゃ、つまらない。
「そうだ、蒸気機関車だ。あの音、あの勢い――あれを釜戸で再現できたら…!」
彼は空き缶に水を八分目まで入れ、しっかりと蓋をしめる。
ただし、蓋には一本の釘で小さな穴を開けておいた。
そこから蒸気が吹き出すように――完璧な設計だ。
火鉢バサミで缶を挟み、慎重に釜戸の中へ。
外側についた水が先に蒸発し、ジュウジュウと音を立てて消えていく。
やがて音が静まると、蓋の穴から白いものがふわりと現れた。
それはまるで線香の煙。
細く、ゆっくりと空へ向かって立ち上る。
しばらくすると、蒸気は勢いを増し、まっすぐに伸びる白い線となり、
ついには目に見えない速さとなって、シュウウウ…という噴射音が辺りに響き始めた。
その音を聞いた瞬間――
Akiraの目の前に広がったのは、もうただの風呂場じゃなかった。
石炭を燃やす巨大な釜戸、
轟音を響かせながら走る黒い車体。
彼は、終着駅のない蒸気機関車の機関士になっていたのだ。
熱と音と蒸気――
Akiraの想像力は、釜戸を、世界で一番小さな機関車へと変えていた。
