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AKIRA

昭和の片田舎で育った少年AKIRA。空、機械、火、電波——身の回りのすべてに心を動かされた少年の物語です。

全14話・第1話から順番に掲載
01
AKIRA

AKIRA-1

昭和の光と影がまだ色濃く残る時代。 日本の片田舎に、AKIRAは末っ子の男子として生を受けた。 家は五人家族。共働きの両親、年の離れた兄、そして優しいけれどどこか厳かな祖母。 日々忙しく過ぎてゆく家庭の中で、家族が顔を合わせるのは夕食のひとときだけ。 だが、そこに会話はなかった。ただ箸の音だけが、静かな部屋にカチカチと響いていた。 そんな

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02
AKIRA

AKIRA-2

今日は、いつもよりずっとまぶしい朝焼けで始まった。 窓を開けると、むわっとした蒸し暑さが押し寄せてくる。 九州の夏は、朝からまるで蒸し器の中にいるようだ。 ばあちゃんは昨日から親戚の家に出かけていて、家には僕一人きり。 いつもは騒がしいはずの家が、今日はしんと静まり返っている。 そんな中、空を見上げると、もくもくと入道雲が空高く立ち上がっ

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03
AKIRA

AKIRA-3

チリンチリン…… チリンチリン…… 古ぼけた黒電話のベルの音が部屋の静けさを破った。 「はい、川崎です」 寝ぼけ眼で受話器を取ると、受話器の向こうから甲高い声が飛び込んでくる。 「ばあちゃんに代わって」 「ばあちゃんは今いないです」 「じゃあ、帰っち来たら松崎の南から電話あったっち、言っちくれ」 「はい、分かりました」 それだけの会話。カ

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04
AKIRA

AKIRA-4

夏といえば、誰がなんと言おうと花火だ。 中でも、 AKIRA が夢中になっていたのは―― 水中花火 だった。 街は夕焼け色に染まり、暑さがようやく和らぎはじめると、AKIRAはそわそわと橋へ向かった。 手にはいくつかの花火と、擦り減ったライター。 川の流れが静かになった頃を見計らって、橋の上に立つ。 「よし……いける。」 一本の花火を手に

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05
AKIRA

AKIRA-5

夜の川辺は、しんと静まり返っていた。 遠くで蛙の鳴き声がぽつりぽつりと聞こえるだけで、風もなく、水面は鏡のように穏やかだった。 Akiraは、橋の上からじっと水面を見下ろしていた。 片手には、すでに火をつけたロケット花火。 緊張で少し汗ばんだ手の中で、シュッという火薬の音がじりじりと鳴り始めている。 そして、タイミングを見計らって――振り

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06
AKIRA

AKIRA-6

星が、今にも空から降ってきそうだった。 その夜、Akiraはいつものように、川沿いの欄干に腰かけて、夜空を見上げていた。 川のせせらぎが、遠い誰かの歌声のように静かに流れてくる。 空には無数の星たちが瞬き、まるでAkiraの存在を、静かに見つめ返しているようだった。 目を閉じると、不思議な感覚が全身を包み込む。 まるで自分の体が空に溶けて

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07
AKIRA

AKIRA-7

あのうだるような夏も、いつの間にか遠ざかり、朝夕にはひんやりとした風が頬をなでる季節になった。 そんな頃になると、Akiraは風呂焚きが楽しみでならなかった。 風呂焚きの始まりは、いつだって「水を張る」ところから。 だけど、空っぽの湯船がいっぱいになるには、子どもの自分にとってあまりにも長い時間に感じた。 じっと風呂場で待つのも退屈で、結

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08
AKIRA

AKIRA-8

釜戸の中は、まるで地獄の入り口のように真っ赤だった。 煮えたぎる炎が、底から上へと揺れ、そこにあるものすべてを赤く染めていた。 「この中に何を入れても、全部真っ赤になるのかな…?」 Akiraの頭にふと浮かんだその疑問が、次の遊びのきっかけになった。 火に勝てるもの――それは水だ。 「火の天敵っていえば、水だよな」 彼はコップに水をなみな

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09
AKIRA

AKIRA-9

蒸気機関車は、ゆっくりと終着駅に近づいていた。 車輪のきしむ音、リズムよく鳴る汽笛――けれどその日、少年の心は別の音に耳を澄ませていた。 石炭をくべる釜戸の中に、ひときわ赤く輝く塊があった。 握りこぶしほどのその塊は、今にも溶けそうなほど真っ赤に燃え上がっている。 「これ、石じゃないか…?」 少年は気づいてしまった。石炭ではない。ただの石

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10
AKIRA

AKIRA-10

「鳥のように飛べたら、どんなに楽しいだろうか…」 そんな夢を胸に抱えながら、Akiraは今日もひとり、家の窓から空を見上げていた。 彼はいつも留守番だった。 家族が出かけるたびに手を振って見送り、ドアが閉まる音を聞いたあと、 しんと静まり返る部屋で、世界から切り離されたような感覚に包まれていた。 けれど、心までは閉じ込められていなかった。

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11
AKIRA

AKIRA-11

見えないのに、聞こえないのに―― どうして? どうなってるんだ? ポケットに入るほどの、ちっちゃなちっちゃなイヤホンから、 まるで誰かが耳元で囁いているみたいに、 はっきりと流れてくるラジオの声。 けれど、辺りを見渡しても、誰もしゃべってなんかいない。 空気は静まり返っていて、風の音すらしない。 じゃあこの声は、一体どこからやってくるんだ

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12
AKIRA

AKIRA-12

見えないものの存在―― ラジオもテレビも、電波という名の電磁波で繋がっていることは、誰もが知っている。 けれど、テレパシーはどうなのだろう? まったく違う場所にいる二人が、何の媒体も通さずに心で会話を交わす。 電磁波も、電話線も、Wi-Fiすら介さずに。 それはいったい、どうして可能なのか? この謎について、私はずっと考え続けていた。 そ

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14
AKIRA

AKIRA-13

テレパシーの存在を知ってしまったあの日から、 私の心に灯った好奇心は、静かに、けれど確実に燃え広がっていった。 「一体、誰と誰が繋がっているんだろう?」 街を歩くたび、カフェで隣に座るカップルや、電車で目を合わせる学生たちが、 ひそかに心で会話を交わしているのではないかと、つい目で追ってしまう。 何気ないしぐさ、突然の笑顔、ぴったりのタイ

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